2017年10月13日金曜日

研修12日目 2017.10.12


本日は初めての7時から14時の研修です。本日も信頼厚いRapuelさんと一緒に動きます。本日のブログは出来事を時系列にまとめてみようと思います。

 まず7時に出勤すると廊下もダイニングもほとんど真っ暗で誰も起きていないことに驚きました。暗闇の中に朝食の仕度が出来ていることが見えます。夜勤スタッフのナジャさんから夜間帯の申し送りを受けます。「○○さんは叩こうとして怒っていた」「○○さんはよく眠れていた」「○○さんは手伝おうとすると手をはらわれた」等々、一人ひとりの情報を受け取ります。そのままオハヨウケアに入ると思いきや、隣のユニットのアハヨウケアを手伝うということで、ベッドから車椅子への移乗が2人介助の方の介助に入りました。高身長で体重もあり片麻痺があるため慎重に、ご本人に声掛けして返事を確認してから、福祉用具を使用しながら移乗介助します。安全に配慮して無事に介助が終わると、気分の落ち込みがあり、麻痺側の体を叩きながら少し興奮されているご様子。スタッフが話をすると徐々に興奮が収まっていきました。

 ユニットに戻るとお一人ダイニングにいらして朝食をとっています。Raquelさんの事が大好きな方で、私にもウインクをしてくれます。
 いつも泣いているSさんは、寝起きがとてもよく「グッモロン(おはよう)」とウインクしながら挨拶をしてくれました。このままの調子で過ごせるようにRaquelさんは調子を合わせて会話をしながらオハヨウケアのお手伝いをしていきます。少しずつ表情が曇っていきましたが、朝食でコーヒーを飲むと「はー」と幸せなため息をついていました。一日の気分の調子を左右する朝のケアは、様々な事を配慮して実施していきます。
 日中はリビングで過ごすAさんはオハヨウケアの際にシャワーも実施しました。その時に改めて実感したのは自己決定です。シャワーがすべて終わり、Raquelさんが「(ヘア)スプレーはどうする?」と聞いていますが、返事がなく洗面台に向かって考え事をしている様子。そのあと2回同じ質問を繰り返しご本人が「あぁ!してちょうだい。」と返事をされました。一つひとつの動作に自己決定を大切にしているということが分かります。この自己決定は、決定を迫るといったことは一切なく、ご本人の状態に合わせて理解できること、できる事を尊重して、相手に負担をかけずに促しています。普通の事のようにさらっとしていますが、相手に不快な思いをさせずに決定してもらうことは、その方のアセスメントができていること、専門知識(介護、認知症、医療など)があることなど様々な角度からその人を見ているからできるのではないかと思いました。

今日はあいにくの天気

 9時30分ごろから本日は珍しく施設長もフィーカに参加します。特変のあったご入居者の状態の確認、来週の献立の確認と変更(メニューは会社で決まっているそうですが、嗜好や調理によって変更することもあるそうです。)、アクティブの確認等、冗談を交えて話をしていきます。施設長の話し方として気になったのは「あなたはどう思う?」と参加しているスタッフ一人ひとりに質問をして、考えさせて答えを聞いていることが印象的でした。どんな話題でも質問しては返事をもらい、それについてまた返答して、皆で笑いあう。皆で一緒に決定していく過程を見て、全員がチームなんだなと実感しました。

 10時30分過ぎにUさんの居室を訪室して様子を伺います。朝食と内服は済んでいますが、いつも朝はゆっくり起きたい方のため、着替えはまだ終わっていません。更衣の声掛けをすると笑顔で「タック(ありがとう)」と仰るため、介助をしていきます。徐々に表情が曇り気分が落ち込んできている様子。それまでなかった体の痛みの訴えがあり、小さな声でなにかポツリとお話しされます。するとRacuelさんは涙を流しながら優しくハグをして、体をさすりながらお話ししていきます。それはとても悲しくて、優しくて、静かな時間でした。その後大丈夫か、何があったのか伺うと「彼女が悲しいことを言ったから。」と仰っていました。この発言についてケアスタッフ間で共有し、パソコンのシステムに記録し、また看護師にも口頭で報告します。10分もしないうちに他の看護師がやってきて「彼女の様子はどう?」と話をしていきます。情報共有のスピードの速さは、日ごろからのコミュニケーションのたまものだと思いました。この後もケアスタッフや看護師が訪室してお話したり、お互いに考えを話し合っていきます。

ソッパをお鍋でコトコト
お豆のスープです

焼き立てのパンとどうぞ
デザートは皆さん召し上がるのが早く、
写真を撮ろうとしたらもうありませんでした。

 11時から本格的に昼食の支度を開始します。メニューは賛否両論のスウェーデン伝統のスープのソッパと、昨日から生地を仕込んでいた手作りパン、クリームとコケモモジャムを添えたクレープです。焼き立てパンの香りがダイニング中に広がります。集まってきたご入居者は香りを感じて笑顔になります。研修当初から同じご入居者のGさんの隣で必要な時に食事介助をしていますが、本日は体調も気分も絶好調で、笑顔で私に名前を聞いてくれます。スウェーデン語でお話しされるため、他のスタッフが「この人は英語で話すのよ。」と伝えると突然流ちょうな英語でお話を始めます。これには他のユニットのスタッフも驚いて集まり、「Oh my God!!」と大盛り上がりで英語で会話をしていきます。「Where are you from?」「How old are you?」。102歳のGさんは若い頃に英語の先生をしていたとのことで、「この歳で英語を覚えていてこんなに話せるなんて!」と皆で感激しています。昔に1年アメリカに住んでいたという新情報も出てきてとても充実した時間でした。私の手を取って軽快に話をされる様子を見た施設長も「今日はどうしたの!?」と写真を撮っていきます(・・・その写真ほしいなぁ)。その後スタッフがスウェーデン語で話しかけても英語で返事をされる様子に、「どうしよう、戻らない。」とそれもまた盛り上がっていました。喜ぶ時は共に喜び、困った時は集まって考え、感情表現豊かで、自分の考えを持っていて、お互いの意見に耳を傾ける。そんなチームワークがある施設で研修ができて私は幸せです。

 昼食後の居室誘導や片付け・掃除が済むと、今度は夕食の支度が始まります。キッチンで調理しながらご入居者と会話することは、始めは大変そうだなと思いましたが、今では”普通の家だとこういう光景あるよなぁ”と思います。少し離れていてもお互いに同じ空間にいることで安心している様子が伺えます。
 本日は人と人との繋がりを強く感じた一日でした。ご入居者とスタッフ、またスタッフ間と。誰かと誰かが繋がって、その輪がどんどん大きくなっていく様子に、以前Raquelさんが仰っていた「この職場は愛情がないと働けない。」という言葉を思い出しました。ご入居者やスタッフに対する愛情は、関係を築く源になっているのだと思いました。

そのまま帰るのがもったいなくて
ガムラスタンをお散歩。
風が弱くて寒くない!
N.I

 本日は14時から21時の勤務の研修です。エリカさんにつきますが、スタッフの送別会を行っており、しばらく一人で昼食後の片づけや隣のユニットで研修している石井さんの手伝いをしたりして過ごしました。この施設には「パーティルーム」と呼ばれる広いスペースがあり、送別会だけでなく、勉強会やミーティングにも使用しているとのこと。 


 こちらは昨日の快晴のAgadair
紅葉の葉が窓に映ってきれいです。もちろん施設内からも各窓から紅葉が見れます

月曜日にお休みで火曜日に出勤すると飾ってあるお花が変わったことに気がつきました。
週に1回はアレンジメントを変えているそうです。簡単なイメージチェンジですね。

体操の会が開催されました。
やはり理学療法士が仕切って音楽を掛けながら行います。
写真はボクササイズで皆でパンチを繰り出しています。
皆さん、かなりアクティブに動かれます。

今日は2名のご入居者、1名の職員にタクティールケアを行いました。

一人目に行ったのは、おとなしめの女性:Kさん。普段は傾眠がちですが、音楽のアクティブや体操等、刺激があると目が輝き、頑張って参加される方です。一人で休んでいる時に隣に座り、言葉が通じなくても手足を動かす運動を促すと必ず一緒にやってくれます。
今日は手のタクティールケアをさせていただきます。微笑みながらOKしてくれました。
施術中にスタッフのお子さんが遊びに来ていて、少しそちらに気をとられていましたが、終了の声掛けをすると「タック(ありがとう)」と笑顔をくれました。前後にジュースをごくごく飲んでくれました。
2人目はユニットで唯一の男性、Cさんです。Kさんのタクティールを興味深そうに見学されていてスタッフが次の許可をとってくれました。いつもシャツをビシッと着ていてダンディな方です。手のタクティールケアをさせていただきました。Cさんは日常生活はほとんど自立されており、ほとんど介助に入ったことがなくわからなかったのですが、右手の人差し指が若干強張っており、本人も「右手は良くないんだ、仕事で使い過ぎたんだ」と眉間にしわを寄せながら教えてくれました。若干ですが、強張りが改善し、両手の冷感はかなり改善しました。
また、お二人共通で言えることですが、スウェーデンは空気がとても乾燥しているせいか、皮膚がかなり乾燥していました。なので、終了後にはオイルはふきとらず、伸ばして肘下あたりまで保湿する事にしました。Cさんは終了後もしばらく指の運動をして強張りの具合を確かめていました。二人とも喜んでいただけてよかったです。
職員には、夜のお休みケアの隙間時間に背中をやらせてもらいました。ユニットのムードメーカーTさんです。二人の施術を興味深そうに見学して冗談交じりに「次、私の番ね」と言っていたのですが、その後は時間が取れなかったからです。Tさんは腰痛を抱えています。背中のタクティールケアを行うと英語は出来ない彼女ですが、エリカに聞いて「ナイス」ととびきりの笑顔で言ってくれました。タクティールは順調に毎日、出来ています。研修中にユニットのご入居者全員にできたら、とひそかに計画しています。私がこのように順調に協力していただけているのは、私とご入居者と言うよりも許可をとってくれるスタッフとご入居者の間に信頼関係と安心感があるからだと思います。私が研修しているユニットのご入居者は認知症の診断を受けている方もいますが、BPSDらしき症状が目立って出ている方がいません。時間によって混乱が強くなる方はいらっしゃいますが、その時間以外は穏やかに過ごされています。それは普段から接しているスタッフがきちんとご入居者と向き合い、アセスメントして正しくケアしている事が実を結んでいるのだと思います。私はその力(基盤)に支えられ、研修中にタクティールケアをさせていただいています。日本に戻ってから、規模や職員数も違いますが、このようにご入居者もスタッフも笑顔で穏やかな時間を過ごせる施設を目指していきたいと思います。やれることから少しずつ。。また、タクティールケアができる職員がいない施設でタクティールケアの良さを実感していただくきっかけ作りにもなれば、と期待しています。明日は、コーディネーターのエミルさんと久しぶりにお会いできるので、たまっている質問をぶつけてみます。タクティールについても触れたいと思います。

さて、最後に夕食のメニュー紹介。ハムステーキとマッシュポテト、グリーンピースです
色彩豊かで食欲をそそります。噛み切れない方には一口大にカットして提供しました。

K.M


青柳は14時からの勤務です。ユニットに入ると、カニヤナさんからコーディネイターのエミルさんが来ていることを伝えられました。初日に一緒に同行して以来の再会です。質問をいろいろ翻訳してもらいました。

今日は、職員の待遇について聞いてみました。日本では介護職の待遇があまりよくなく、離職も多いことが知られていますが、スウェーデンではどうなのか興味があったためです。2日目のオリエンテーションでは、日本ほど離職は多くないといった内容を教えてもらいましたが、実際の職員の声を聴きたいと思っていました。答えてくれるのはソーニャさんとカニヤナさんです。ちなみにここの施設を経営しているのは、北欧に何か所も施設を展開している大企業だそうです。
勤続年数について聞いてみると、2人とも10年以上ここに勤めているそうで、他にもこの施設には長期にわたって働き続けている人が多く、あまり退職者は多くないとのこと。
辞めない理由として、
・職員、同僚がいい。
・仕事が面白い。
・高齢者が好き。
・職場の立地がいい。
・スウェーデンはご飯がおいしい(笑) 
などなど。最後のはタイから来たカニヤナさんの冗談です。ちなみに料理好きだそう。
介護職のお給料はスウェーデンでもあまり良くはないようですが(現在処遇改善を行っている)、ソーニャさん曰く『お給料は安いけど、この仕事が好きだし、人生のほとんどは職場にいるんだから。ライフクオリティはお給料より大事』ときっぱり。
逆に辞める理由としては、転居や、大学に入って勉強しなおすためなど(スウェーデンは大学も無料)。待遇面の理由として、時給で働いている人がもっと長時間働ける施設に移ったりすることはあるそうです。なお、人間関係で、という回答は今日に関してはありませんでした。

今日は高校を卒業したが進路を決めきれず、アルバイトのような形でここにきている若い方や、福祉の資格は持っていないものの、現在勉強中の人がユニットに入っており、こういった柔軟な働き方もできるようです。ベテラン二人は『新人さんも楽しく仕事ができるようにしていきたい』と言っていました。

さらに聞くと、以前は現在と異なり、細かく業務内容やシャワー浴の曜日などが決まっていて、時折業務にストレスを感じることもあったそうです。ただ、時間をかけて改善し、また、経営会社も変わったりして、今のような入居者さんに個別かつ柔軟に対応できる形になっていったとのこと。

あくまでこの施設に限った話で、スウェーデン全体がこうなのかはわかりません。ただ、実際にここの職員の働きぶりを間近で見て一番感じるのは、忙しい時もあるけれど、多くの職員が入居者さんと本当に一緒に楽しく過ごしている、ということです。
今日聞いたことは、日本に帰ってからもしっかり覚えていようと思いました。


今日はあまり写真を撮れませんでした。夕食のチキンカレーです。チキンが大量。

夕食前にタクティールをしました。今までは背中ばかりでしたが今日は手を実施しました。ゆっくりと丁寧にを心がけて行い、あまり自分から喋ることがない方なのですが、終了後には『良かった』と一言いただくことができました。

H.A

7 件のコメント:

  1. 研修12日目お疲れ様です。

    気がつけばもう半分以上過ぎていて・・・早いですね!
    皆さんから研修のお土産話を直に聞けるのをいまから楽しみにしてます笑

    自己決定⇒相手に不快な思いをさせずに決定してもらう 非常に難しいですよね。自分も今だにどの程度までお声かけしようか迷うときがあります。

    富士見 尾崎

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    1. 尾崎さんコメントありがとうございます。本当に今日まであっという間でした。
      自己決定については、よくコメントいただいて皆さんの注目度の高さが感じられます。スウェーデンでは、自己決定が当然のこととして根付いているので聞く方も聞かれる方も自然だと思いますが、日本だとそうはいかない事も多いと思います。わざわざ聞かずに察してほしい(それが気を利かすことでしょ)とか、暗黙の了解、なんて言葉もありますよね。本当に難しいと思います。私もこれからも迷い続けると思います。でも、一番は相手を思って気を遣うことが大事なのでしょうか。「相手に不快な思いをさせずに」が大事ですよね!
      尾崎さんも研修でいろんなことを感じ、体験していると思います。戻ってから是非、共有しましょう。 富士見三浦

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    2. 尾崎さんありがとうございます。
      気付けばこんなに日にちが過ぎて、あっという間にここまで来た感じがします。
      自己決定が大切で、日本でもしたい!と思ってもそもそもそれをご入居者やスタッフが希望しているかという所だと思います。私たちが自己決定良いよねって思っていても、当事者たちがどう思うか。「いちいち聞かないでほしい」「感じてほしい」とか様々感じる人がいて当たり前だと思います。それも自己決定ですね。まずその方のことをよく知って、不快な思いをさせずに一緒に関わっていきたいですね。
      富士見 石井

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  2. お疲れ様です。
    こちらは昨日より12℃くらい下がって少し寒いです。

    前回のコメントの返信、ありがとうございました。

    今日はタクティールケアのフォローアップを受けました。あまり手技を覚えていなかった自分がいました(笑)。これから頑張っていきます。
    スウェーデンでのタクティールケアは、実際どれくらい取り入れているのか?そしてスウェーデンの方はタクティールケアについてどう思っているのか?

    これからタクティールケアを頑張る者としても聞いてみたいです。

    新浦安 吉見

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    1. 吉見さんお疲れ様です。タクティールケアの手技は身につけないと忘れちゃいますよね(笑)頑張ってください。

      タクティールケアについては私と石井さんがお世話になっている施設では導入されていませんし、シルビアシスターの存在も知らない、と担当者は言っていました(ブログでも紹介の通りです)
      取り入れ度合いは正直、分かりません。何人かのスタッフは「タクティールケアを受けたことがある」とも話しています。「気持ちのいいもの」との理解のようですが、オキシトシン等については理解していないようでした。私はスウェーデンでタクティールを体験していないスタッフに体験してもらったりもしています。皆「ナイス」と言ってくれますよ。
      少なくとも言葉が通じない私にとっては、タクティールケアがスタッフともご利用者ともを繋いでくれる大切なコミュニケーションツールになっています。「タクティールケアができてよかった」と感じています。もう少しわかることがあればご報告していきますね。 富士見三浦

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    2. 吉見さんお疲れ様です。

      お世話になっている施設では、タクティールケアを知っている人のほうが少ないと思います。中には体験した方もいますが。ちなみにブンネメソッドは聞いた方ほぼ全員知りませんでした。「音楽療法のこと?」といった反応でしたね。
      富士見 石井

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    3. お疲れさまです。
      タクティールは、ウチの施設に関しては皆知っており、できる人も多いです。初日に職員に対してタクティール講座をやっていました。定期的に開催されているみたいです。また、タクティールをやりたいと申し出ると『やってやって!』みたいな感じです。週間アクティブ表にもタクティールの文字がありました。
      施設間でも、開所時期や方針などによってかもしれませんが、差があるみたいですね。
      新浦安 青柳

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